「オーラルフレイル」への注目
近年、食べこぼし、むせ、噛めない食品の増加、滑舌の低下などの軽微な口腔機能の低下を指す「オーラルフレイル」が注目されている。オーラルフレイルの者は、健常者と比較して身体機能の低下や要介護認定、死亡のリスクが高まると報告されている。また、舌圧 (舌の力) は、認知機能と相関を示すことが知られている。オーラルフレイルの原因となる因子のうち、滑舌、舌圧、嚥下機能、咀嚼機能はトレーニングによる改善が期待されるが、認知症患者を対象にこれらの因子の改善がもたらす効果を検証した先行研究は、これまでにほとんど行われていない。
医療法人社団新聖会と株式会社オルトメディコは、これまで約10年間にわたり、認知症患者に対する口腔ケアが口腔環境や全身の健康状態に及ぼす影響に関する共同研究を続けているが、新規研究テーマとして、認知機能との関連があり、トレーニングによる改善が期待される舌圧に注目した。
舌トレーニング用具を用いた介入研究を実施
本研究では、口腔ケアによる口腔機能の維持に加え、舌トレーニング用具を用いた定期的な口腔機能改善プログラムの実施が、老人福祉施設に入居している認知症患者の口腔機能に及ぼす影響を調査することを目的に、試験を実施することとした。本研究は医療法人社団新聖会が口腔ケアを担当する老人福祉施設にて実施される。対象者は、60歳以上の認知症患者であり、「ペコぱんだ」 (株式会社ジェイ・エム・エス、広島県広島市) を用いた舌トレーニングを12週間、1日3セットを目標に実施し、口腔機能や全身の健康状態に改善が認められるか検証する。
我々は本研究結果が認知症患者の口腔機能、さらには全身の健康状態や認知機能の維持に寄与することを期待している。
臨床研究実施計画番号: jRCTs032190193